てんりゅう治療院

予約制 TEL:0265-95-3551 日曜、祝日休診 受付時間:9:00~20:00

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脚長差について

朝晩めっきり涼しくなり、秋めいてきましたね。最近、両足の長さの差(脚長差)についてのご質問を多く頂きましたので、これにつきまして色々とお世話になっております春山クリニック 春山 勝 医師のブログを引用したいと思います。

右腸骨はなぜ前方回旋するのか

英国で講義を受けたとき、人間の右腸骨は前方回旋し、左は後方回旋する。そのため、大腿骨の長さが解剖学的に左右同じでも、大腿骨が付く寛骨臼の位置が右腸骨の前方回旋によって下方に下がるため、見かけ上右足は長く、左足は短くなるという脚長差が出現する。それによって骨盤の水平線が崩れ、代償性の側弯が発生し、その影響は腰椎、胸椎、頚椎と上昇し最終的に頭蓋骨も歪んでしまうと説明を受けた。

この図はカナダの理学療法士であるシャンバーガーの図であり、多くのレントゲン所見から彼は上記の結論に達した。(Wolf Schamberger. The Malalignment Syndrome.Churchill Livingstone.2002.p.29より引用)これについて、ワーナム先生も自身の臨床経験から、この結論は正しいとしており、この代償性側弯を解消するために、骨盤治療の重要性を指摘している。

それではなぜ、人間は右の腸骨が前方に回旋するのかについての解説はシャンバーガーの本にもなかったので、自分なりに考えてみた。

◇右腸骨が前方回旋する原因

人間の内臓は左右対称ではない。身体の右側にある臓器の中で重要なのは肝臓である。肝臓の重さは男1,300g、女1,000g(金子丑之助 日本人体解剖学 下巻p.350)とされており、非常に重い臓器であって、そのほとんどが右葉で構成されている。

それでは肝臓はどこに付いているかというと、腹壁に直接付いているのではなく、横隔膜に付着している。肝臓は、前面には支えがなく、後面で横隔膜に付いている。上部に肝鎌状間膜があるが横隔膜に付着していることに変わりはない。そのため、我々は季肋部から肝臓の前面を触診することが可能である。

肝臓と横隔膜の関係を横から見たのがこの図である。肝臓の重心(白い点)はおそらく前方にあると考えられるし、特に重い肝右葉を支える点が肝臓の後方であるなら、道路の外灯の様に一点支持の構造体と同じような状態となる。

その時、肝臓の付着部である横隔膜後面には、肝臓が重力で前下方に下がるときの力が、横隔膜を上に引き上げる力として作用する。(赤い矢印)

横隔膜は筋肉であり、その起始は複数あるが、第12、11肋骨もそのうちのひとつであり、停止は腱中心である。

第11、12肋骨の構造は他の肋骨と異なり、その前方部分はどこにも接していない。この理由は胸郭の運動と腰椎の運動は全く異なるため、私もこの2つの肋骨が緩衝剤として自由な状態となっていると考えていた。

しかし、機能的に考えてみると、特に右第12肋骨は横隔膜の起始部である点から、横隔膜を介して肝臓の重さが強くかかっている部分であるにもかかわたず、その先端が固定されていない状態で、一定の位置を保っているというのは力学的に考えて不自然である。

そこで第12肋骨に付着している他の筋をみてみると腰方形筋があり、これは下方の腸骨稜と第12肋骨を結ぶ筋である。

腰方形筋による右腸骨の前方回旋

ということは、特に右第12肋骨には、肝臓の重さが横隔膜を介して上方へ引く力として加わり、それが腰方形筋を上方に引き上げる力として作用するので、第12肋骨は前方部分が固定されていなくても、その位置を維持することが可能となり、最終的に、肝臓の重量は右腸骨を上方に引く力としてかかるので、その結果として右腸骨は前方回旋していると考えられる。


◇左腸骨が後方回旋する理由

S状結腸の走行

これは英国のICOの論文にあったものであるが、左下腹部にS状結腸が存在する。
腸管の内容というのは常に蠕動運動によって送られており、全大腸に均等に存在するのではなく、S状結腸に送られてそこで貯められている。

このS状結腸が左の腸骨稜の上に存在するため、腸管内容物の重さによって左腸骨は後方回旋すると考えられている。

この両者の作用によって見かけ上の脚長差が出現するのである。

この推論はおそらく正しい。なぜなら、英国のクリス・バッテン講師がイタリアへ講義で行ったとき、古くからある有名な医学校の解剖学教室を訪れたときの写真を見せてくれた。
そこには内臓逆位症の解剖標本が保存されていて、その症例では通常右にある肝臓が左にあった。そして、その標本をよく見ると、左の腸骨は前方回旋していたのである。

代償性の脊椎のゆがみ

 この様に人間は外傷性の障害を受けた場合を除いて、そのほとんどが右腸骨は前方回旋しているのであり、それによって代償性の変化が脊椎全体に生じていると考えられる。
従って、脊椎の治療をおこなう場合には、骨盤の水平ラインを再構築することを行わなければならない。

なぜなら、代償性の変化というのは、その局所に対していくら治療をおこなっても、原因病変が解消されない限り、代償性であるため、回復することはないからである。

従って脊椎の治療においては、頭蓋治療も含め、骨盤の治療を含めておこなうべきであると考えられる。

(参考文献 相磯貞和訳 学生版ネッター解剖学図譜.丸善株式会社.)

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